オンライン秘書の仕事は、ほとんどが「業務委託契約」です。会社員と違って労働法に守られない分、自分を守るのは契約書だけ。それなのに、「難しそうだから」とよく読まずに署名してしまう人が少なくありません。
この記事では、契約書のどこを見ればいいのかを7つに絞って解説します。法律の知識は不要。チェックの観点さえ知っていれば、危ない契約はかなり避けられます。
まず前提:業務委託は「対等な契約」
業務委託は、発注者と受注者が対等な立場で結ぶ契約です。つまり、内容に疑問があれば確認や修正の相談をするのは当然の権利。「修正をお願いしたら印象が悪くなるのでは」と心配する人が多いのですが、まともなクライアントほど、契約書をきちんと読む相手を信頼します。
確認すべき7つのポイント
①業務の範囲は具体的か
「秘書業務全般」のような曖昧な記載は、あとから業務がどこまでも増える火種です。「メール対応、スケジュール調整、請求書発行」のように列挙してもらうか、別紙(業務仕様書)で範囲を定めるのが安心。「上記以外の業務は別途協議」の一文があると理想的です。
②報酬の金額・締め日・支払日
金額だけでなく、「月末締め・翌月末払い」のような締め支払いサイクル、振込手数料をどちらが負担するかまで確認します。支払いサイトが翌々月末など長すぎる場合は、資金繰りに響くので交渉の余地があります。
③超過分・追加業務の扱い
月◯時間の契約なら、超えた分はどうなるのか(超過単価があるのか、切り捨てなのか)。ここが書かれていない契約は、無償の残業が生まれやすい構造です。「月20時間を超える場合は時給◯円で精算」のような条項を入れてもらいましょう。
④契約期間と解約の条件
「解約は◯ヶ月前に書面で通知」が一般的(1ヶ月前が多い)。注意したいのは、相手だけが即時解約できて、自分は3ヶ月前通知が必要、のような不均衡な条項。両者同条件になっているかを見てください。
⑤秘密保持(NDA)の範囲
クライアントの情報を守るのは当然ですが、範囲が広すぎる場合(「業務で知り得た一切の情報を永久に」など)は、実績として社名を出せるかに関わります。「実績としての社名掲載は事前承諾のうえ可」と一文入れてもらうと、営業活動に支障が出ません。
⑥損害賠償の上限
見落としがちですが重要です。賠償額に上限のない契約は、万一のミスで受け取った報酬以上の請求を受けるリスクがあります。「損害賠償は当該月の報酬額(または直近◯ヶ月の報酬総額)を上限とする」が入っているかを確認し、なければ相談を。フリーランス向けの賠償責任保険への加入も併せて検討する価値があります。
⑦知的財産・成果物の権利
作成した資料やマニュアルの著作権がどちらに帰属するか。クライアントに譲渡するのが一般的ですが、自分が以前から持っていたテンプレートやノウハウまで譲渡対象にならないよう、「受注者が従前から保有するものは除く」の記載があると安心です。
危ない条項の例 | 直してもらう例 |
|---|---|
業務内容「秘書業務全般」 | 業務を列挙+「以外は別途協議」 |
超過時間の記載なし | 「超過分は時給◯円で精算」 |
賠償上限なし | 「賠償は月額報酬を上限とする」 |
解約条件が不均衡 | 双方「1ヶ月前の書面通知」に統一 |
修正をお願いするときの伝え方
指摘ではなく相談の形にすると、角が立ちません。
「契約書ありがとうございます。2点ご相談です。①超過時間の扱いの記載がないため、『月20時間超は時給◯円』の追記は可能でしょうか。②損害賠償について、上限を月額報酬とする条項を入れていただけると幸いです。」
この程度の相談で態度が硬化するクライアントとは、そもそも長い付き合いは難しいと考えたほうがよいでしょう。
契約前に超過分の精算ルールを入れてもらったおかげで、繁忙期に業務が倍増したときも気持ちよく働けました。あの一文がなかったらと思うとぞっとします。(オンライン秘書・5年目)
2024年施行のフリーランス保護法も味方に
フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス保護法)により、発注者には業務内容や報酬額を書面等で明示する義務があります。「契約書を作ってもらえませんか」という依頼は、法律上も正当な求めです。口約束だけで仕事を始めるのは避けましょう。
まとめ
契約書チェックの本質は、「揉めたときにどうなるか」を先に決めておくことです。業務範囲・報酬・超過分・解約・秘密保持・賠償上限・権利の7点を確認し、曖昧な部分は相談する。それだけで、オンライン秘書として安心して長く働ける土台ができます。今結んでいる契約書があれば、この7点で見直すところから始めてみてください。